2026年 9月 の投稿一覧

決めることが仕事

先日ある会社で、管理職研修を実施させていただきました。
次々に持ち込まれてくる案件に優先順位をつけて、限られた時間で判断していく
インバスケットというプログラムを実施いたしました。

面白かったのは、皆さんの手が止まる場所がとてもよく似ていたことです。
「情報が足りないので判断できません」「もう少し様子を見てから決めます」
そう書かれた意思決定シートが、いくつもありました。

決めきれない理由をお聞きしてみると…。
「もし外したときに部下や上司にどう思われるだろう」という不安が、
いちばん大きいとおっしゃるんです。
つまり決める力は、性格ではなくて習慣です。
だからこそ、練習すれば誰でも鍛えることができるんですね。

私も起業する前はサラリーマンで、管理職をしていた時期があります。
当時の私は、決めるのが本当に怖かったんです。
間違ったらどうしよう、「もう少し情報を集めてから」と、
いつも先延ばしにしていました。
自分では慎重に考えているつもりでした。
でも部下から見れば、ただ待たされているだけやん。
そのことに気づいたときは、これではあかん!と深く反省しました。
決めないというのは、いちばん優しくない答えだったんですね。

皆さんの職場では、どれくらい決まっているでしょうか??
ここからは、決める力を鍛えるポイントを3つお伝えしたいと思います。

まず1つ目は、重要度と緊急度で仕分けることです。机の上の案件を、
すべて同じ重さで見てしまうと、目の前の急ぎのものから手をつけます。
そうすると、重要だけれど急ぎではない仕事が後ろに回されてしまいます。
たとえば部下の育成や仕組みづくりが、いつまでも手つかずのままです。
まず仕分ける。それだけで判断はぐっと軽くなるんですね。

次に、100点の答えを待たないことです。管理職が扱う案件に、
完璧な情報がそろうことはほとんどありません。7割の材料で決めて、
やってみて違っていたら直す。この順番でいいんです。研修でも、
先に決めた方ほど次の案件に進んでいて、扱えた量が多くなっていました。
何もしないことがいちばんの失敗で、やってみて直すことが成功なんです。
小さく決めて早く直すほうが、結果として遠くまで進めるんですね。

3つ目は、決めた理由を言葉にして伝えることです。結論だけを渡されると、
部下は納得できません。なぜそう決めたのか、何を大事にしたのかを添えると、
次に似た場面が来たとき、部下は自分で判断できるようになります。
上司の判断の基準が見えることが、いちばんの教材になるんですね。
判断の数だけ、チームに共通の基準が積み上がっていきます。
決めることは、部下を育てることでもあるんですね。

判断を先延ばしにしないだけで、チームのスピードは本当に変わります。
そして決める回数を重ねるほど、外したときの立て直しも早くなります。
ぜひ皆さんも、いま抱えている案件をひとつ選んで、今日決めてみてください。

10月からは下期のスタートですね。朝晩も少しずつ涼しくなってきました。
気持ちのいい季節に、気持ちよく決めて前に進んでいきたいと思います。

知ることがスタート

先週、熱海の海へダイビングに行ってきました。お目当ては、
海の底に眠っている沈船です。これが本当にすごすぎて、
水の中に大きな船体が現れた瞬間、思わず息をのみました。
まさにタイタニックの世界なんです…!もちろん、
あのタイタニックポーズもしっかりやってきました(笑)

以前にもお伝えしましたが、私はダイビングが大好きです。
超はまってます。
でも実は、ダイビングを始めるまでは、沈船を見に潜るという
楽しみ方があること自体、まったく知りませんでした。
沈船なるものがあることすら、知りませんでした。

ところが潜るようになると、どんどん海に興味が出てきて、
熱海にはこんな沈船があるらしい、と知るようになったんです。
知ってしまったら、もう行きたくて仕方がない。
1年前からずっと、行きたいと思い続けていた場所でした。

知らなければ、行きたいとも思わなかったはずなんですね。
興味は知ることから生まれるんだな、と改めて感じました。

そしてもう一つ、先週は「知る」ことの大切さを
痛感する出来事がありました。今週の火曜日は娘の誕生日で、
その日は私も仕事が入っているんです。平日は娘も学校があるので、
前後のどこかで一緒にプレゼントを買いに行ったり、
ご飯を食べに行ったりすればOKだろう、と考えていました。
仕事があるくらい普通のこと、と自分の感覚で思っていたんですね。

ところが娘に伝えたら、「ひどい」と泣かれてしまいました。
誕生日は当日じゃないと意味がない、と言うんです。
正直、最初は「そんなもの??」と思いました。
でもよく考えたら、私は中学生の頃の気持ちを、
すっかり忘れてしまっていたんですね。
自分と一緒と思ったらあかん!と、深く反省しました。

そこで日曜日に、娘の希望でステーキを食べに行きました。
すると店員さんが「親子でディナー、いいですね。
今日は何か特別な日ですか?」と声をかけてくださったので、
「火曜日が誕生日なんです」とお話ししたんです。
そうしたらなんと、サプライズで花火付きの
お誕生日デザートプレートが出てきたんです!

店員さんが「お誕生日おめでとうございます!」と
お祝いしてくださって、サービス精神、本当に最高でした。
この店員さんも、知ったからこそ祝ってあげたいと
思ってくださったんだと思います。

ダイビングも、娘の誕生日も、お店のサプライズも、
共通しているのは「知ることがスタート」だということ。
相手のことでも、興味のある分野でも、まず知らなければ、
関心も湧かないし、行動にもつながらないんですね。

これは職場でもまったく同じです。部下や後輩、お客様のことを、
皆さんはどれだけ知っているでしょうか??
ここからは、「知る」を始めるためのポイントを
3つお伝えしたいと思います。

まず1つ目は、自分の物差しを一度脇に置くことです。
私が娘に対してやってしまったように、人は無意識に
「このくらい普通」「自分ならこう思う」と考えがちです。
でも年代も立場も違えば、大事にしているものは違います。
サラリーマンで管理職をしていた頃の私も、自分の感覚で
部下を見てしまっていたことが、きっとあったと思います。
「相手は自分とは違う」という前提に立つことが、
知ることの第一歩なんですね。

次に、一歩踏み込んだ質問をすることです。
あの店員さんの「今日は何か特別な日ですか?」という
ひと言がなければ、サプライズは生まれませんでした。
職場でも「最近どう?」だけで終わらせずに、
「今いちばん力を入れていることは?」と、
相手が話したくなる問いを投げかけてみてください。
質問は、あなたに関心がありますよ、というメッセージにもなります。

3つ目は、知ったことを小さな行動に移すことです。
知っただけで終わってしまうと、相手には何も伝わりません。
資格試験を受けると聞いたら、結果を気にかけて声をかける。
好きだと言っていた分野の情報を、そっと共有してみる。
そんな小さな行動の積み重ねが、「この人は自分のことを
見てくれている」という信頼につながっていきます。

分かってもらえない、分かり合えない、と嘆く前に、
まずは自分から知ろうとしてみる。そこからすべてが始まります。
ぜひ皆さんも、身近な人のことを「知る」ところから、
日々のコミュニケーションに取り入れてみてください。

9月も半ばになりましたが、まだまだ暑い日が続きますね。
これからの秋の行楽シーズン、皆さんもぜひ新しい何かを
「知る」お出かけを楽しんでみてはいかがでしょうか。

情報は出して初めて価値になる

先週は、ある企業様で、参加者の層は若干異なりますが
情報整理と共有の研修コンテンツを実施させていただきました。
2社とも内容は少し違うのですが、どちらでも同じワークを取り入れました。
参加者それぞれにバラバラの情報カードを配り、それを出し合って
1つの答えにたどり着いてもらう、という情報整理のゲームです。

面白いのは、2社ともまったく同じところでつまずかれたことです。
制限時間が来ても、答えが出ない。
種明かしをすると、必ず誰かの手元に、まだ出されていないカードが
残っているんです。

「なんで言わなかったんですか?」と聞くと、
返ってくる答えもだいたい同じです。
これは関係ないと思ったので…
みんなもう知ってると思って…
わざわざ言うほどのことでもないかなと…

そうなんです。情報が足りなかったのではなく、
情報は全員がちゃんと持っていた。
ただ、出されなかっただけなんですね。

これ、私自身も本当によくやってしまいます。
社内でメンバーに仕事を頼む時、自分の頭の中にある背景を全部は言わずに、
結論だけ渡してしまうんです。
このお客様にはこういう経緯があって、だからこの資料はこの順番で…
という前提が、私の中では当たり前になっているので、
わざわざ言うことでもないと思ってしまう。

でも受け取った側からすると、判断する材料がない。
出来上がってきたものを見て、あれ?と思って、
そこで初めて「あ、あの話してなかったな」と気づくわけです。
言わなかった私が悪いのに、一瞬「なんでやろ」と思ってしまうんですから、
なかなか人間の思考とは…自分勝手ですね(笑)

自分が持っている情報の価値は、自分では判断できない。
これが、このゲームの一番の学びだと思っています。

では、どうすれば情報が出てくるチームになるのか。
ポイントは3つです。

まず1つ目は、「関係ないかもしれませんが」を前置きにして、
とにかく出してしまうことです。
その情報が要るのか要らないのかを決めるのは、自分ではなく場です。
自分で取捨選択してしまった時点で、
チームはその情報を検討する機会すら失います。

2つ目は、口頭だけで済ませず、書いて見えるようにすることです。
研修でポストイットを使うのには、ちゃんと理由があります。
口で言った情報は、その場で流れて消えてしまうんですね。
紙に書いて机に並べると、全員が同時に全体を見られるようになり、
何が足りていないのかも一目で分かります。

3つ目は、リーダーが「他に何かある人?」と
全体に向かって聞かないことです。
この聞き方だと、たいてい誰も手を挙げません。
そうではなく、「〇〇さん、手元には何が残ってますか?」と、
一人ずつ名前で聞く。
これだけで、埋もれていた情報が驚くほど出てきます。

会議で結論が出ない。認識がずれる。
後から「聞いてない」が出てくる。
その原因は、情報がなかったからではなく、
持っている人が出さなかったから、ということが本当に多いです。

そして出さなかった理由は、たいてい悪意ではありません。
気を遣った、遠慮した、大したことないと思った。
ただそれだけなんです。
だからこそ、出しやすい空気をつくることが、
リーダーの大事な仕事になります。

先週は福岡まで足を運びましたが、業種も地域も違う会社で
同じ場面に出会うと、これは業界の問題ではないな、と改めて感じます。
うちの中学生の娘も、先週から2学期が始まりました。
夏が終わって、いよいよ後半戦です。

今週の会議で1つだけ、「関係ないかもしれませんが」と言ってみる。
ぜひ皆さんも試してみてください。
そこから話が動き出すことが、本当によくあります。

ロジカルは訓練で身につく

先週ある会社で、ロジカルシンキング研修を実施させていただきました。
参加者は若手から中堅の皆様です。
研修の冒頭でいつも聞くのですが、「ロジカルシンキングが得意な方?」と聞くと、
ほぼ手は挙がりません。

逆に「苦手な方?」と聞くと、ほとんどの方の手が挙がります。
私は感覚で仕事をしているので…とか、頭の中では分かってるのに、
話すとぐちゃぐちゃになってしまうんですよ〜とか。
そもそも理屈っぽい人だと思われたくない、という声もよく出てきます。

その気持ち、本当によく分かります。
というのも、以前にもお伝えしましたが、私自身が超感情人間で、
昔はロジカルシンキングがとても苦手だったからです。

若い頃の私は、なんとなくこっちの方がいい感じがする、絶対こっちの方が面白いやん、
で物事を決めていました。
ですから提案をしても、上司から「で、根拠は?」と聞かれた瞬間に固まってしまう。
熱意だけで押し切ろうとして、伝わらないのは相手のせいだと思っていたことも
ありました。

今思うと、なかなかの自己中ですね(笑)
ただ20代後半の時に、これではあかん!と思ってロジカルシンキングを学び、
意識して実践するように心がけてきました。

すると今では、論理的に考えることは意識しなくてもできるようになりました。
つまりロジカルシンキングと言うのは、生まれ持った性格やセンスではなく、
完全に訓練で身に付くスキルなんですね。

私が実際にやってきたのは、とても地味なことです。
まず1つ目は、話す前に「結論は一言で言うと何か?」と自分に問うことです。
頭の中で一度だけ、この問いを挟む。それだけです。
最初はとても不自然ですし、時間もかかります。
でもこれを何百回と繰り返していると、勝手に口が結論から動くようになります。

2つ目は、「なぜそう思うのか?」と「だから何が言えるのか?」を、
自分の意見に対して何度も問いかけることです。
感情型の人は、実は理由がないわけではありません。
感覚の下にちゃんと理由が眠っているのに、それを言語化していないだけなんです。
ですからこの問いかけを繰り返すと、自分の感覚がだんだん言葉になっていきます。

3つ目は、頭の中で考えずに、必ず紙に書き出して並べることです。
頭の中でこねくり回すから、ぐちゃぐちゃになるんですね。
書き出して、似たものをまとめて、順番に並べる。
これだけで話は驚くほど整理されます。

このロジカルシンキングが身に付くと、ビジネスにおいてはとても有利です。
まず提案が通りやすくなります。
相手が納得するための材料を、こちらから渡せるようになるからです。

次に、意思決定が速くなります。
自分が何で迷っているのか、その論点がはっきりするからです。

そして何より、この人は物事を整理して考えられる人だ、と信頼されます。
任される仕事の質そのものが、変わってくるんです。

ただ、ここで一つお伝えしておきたいことがあります。
ロジカルになるということは、感情を捨てるということでは決してありません。
熱意や共感は、人を動かす最大のエネルギーです。
ただ、そのエネルギーを相手に届けるには、通り道が必要なんです。
ロジックはその通り道であり、器なんですね。
ですから感情型の方がロジックを手に入れると、
実は一番強いんじゃないかな、と思っています。
中身の熱さは、元々持っているわけですから。

研修の最後に、冒頭で「苦手です」と言っていた方が、
これって才能じゃないんですね、練習なんですね、と笑って言ってくださいました。
まさにその通りです。
苦手だと思っていることの多くは、才能の問題ではなく、単に練習量の問題だったりします。

早いもので、8月ももう終わります。
9月からの後半戦、まずは「結論は一言で言うと何か?」の問いかけ1つだけでも、
ぜひ皆さんも普段の会話の中に取り入れてみてください。
そうすることでトレーニングされ、無意識にできるようになります。