先日、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)に関する研修を
実施してきました。
その際、思い込みの危険を伝える例として「カマス理論」をご紹介しました。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、このような実験です。
水槽の中に肉食魚のカマスを入れ、透明なガラスの仕切りを挟んで、
反対側に餌となる小魚を入れます。
カマスは小魚を食べようと突進しますが、何度もガラスにぶつかるうちに
「ここから先には行けない」と学びます。
しばらくして透明な仕切りを外しても、
カマスは「見えない壁がある」と思い込み、
目の前に小魚がいても食べに行こうとしません。
これは、「本当はもう障壁などないのに、過去の経験や思い込みによって
自らの可能性を閉ざしてしまう」
という戒めとしてよく使われる理論です。
研修の休憩時間、ある受講者の方から非常に興味深いご質問をいただきました。
これまで何度もカマス理論をお話ししてきましたが、
このような視点をいただいたのは初めてでした。
「カマスにも見えない壁の思い込みがあると思いますが、
『小魚側』にも思い込みがあるのではないでしょうか?」
その方の解釈は、次のようなものでした。
「小魚は『壁があるから絶対に食べられない』と安心しきっている。
でも、本当はすでに壁が取り払われていて危険な状態なのに、
それに気づかず悠々と過ごしてしまっている。
これはつまり、『味方だと思っていた人が実はそうではなかった』
『危害を加えられないと思っていた人から、実は狙われているかもしれない』
というような、もっと危機感を持てという教訓にも聞こえました」
改めてカマス理論を再度説明した後、少しお話を伺うと…
その方は現在とても「追い詰められている心理状態」にいらっしゃるようでした。
「何でもかんでもマイナスに捉えてしまう」
「すべての矢印が自分に向かってきているように感じる」と、
ご自身の心理状態を「ダメなところだと分かっているんですが…」と
言いながらも仰っていました。
※研修内で実施したストレスセルフチェックテストでも
非常にストレスが多い、という結果をご本人も
「この通りなんです…」と見せてくださいました。
この出来事を通して、私はハッとさせられました。
同じ「カマスと小魚」の1つのストーリーであったとしても、
その時の心理状態や置かれている環境、背景によって、
出来事の捉え方や感じ方には信じられないほどの差が生まれるんです。
私自身は「カマスの思い込み(自らの限界を決めてしまうこと)」を
伝えたつもりでしたが、その方の心には
「小魚の危機管理(周囲への警戒心)」として響いていました。
これもまた、人間が持つフィルターであり、
ある種のバイアスの姿なのだと実感しました。
職場のコミュニケーションにおいても、
全く同じ言葉や出来事を共有しているはずなのに、
人によって受け取り方が180度違うことがあります。
「そんなこと言った??」と思うことも多く
これは私の言ったつもりの内容と、相手が捉えた内容が大きく違うからです。
「なんで分からんの??」
「なんでそんな風に解釈するん??」
と条件反射的に思いがちですが…
相手の捉え方に「おや?」と思うことがあれば、
その言葉自体(捉え方自体)ではなく、
相手の背景にある心理状態や状況に目を向けてみると、
本当のメッセージが見えてくるのかもしれません。
研修等でアンコンシャスバイアスをいつもお伝えしていますが
改めてアンコンシャスバイアスを痛感した出来事でした。
