
9日間という長い夏季休暇を終えられた方も多いのではないでしょうか。
私は前半は仕事をして、後半は墓参り、子供の宿題を見たり…
とゆっくりと過ごさせていただきました。
さて先日の終戦の日、何十年かぶりにテレビで「火垂るの墓」を観ました。
戦争に対して、いろいろ思うことはありますが、今日は少し違う視点から。
初めてこの映画を観たのはおそらく中学生か高校生の時。
その時には、戦争の悲惨さや反戦映画として捉えていたと思います。
一方で主人公の清太や節子に同情し、西宮のおばさんには「ひどい人や」と
嫌悪感を覚えました。
先日初めてこの映画を観た娘も同じことを言っていました。
「この人、最低や。」と…。
しかし私が思ったのは、西宮のおばさんが言っていることは
言い方は多少キツイですが、すごく真っ当で正論です。
「清太さんなあんたもう大きいねんから、助け合いということ考えてくれな
あんたらはお米ちっとも出さんと
それでご飯食べたいいうても、そらいけませんよ
通りません」
はい、その通りです。
また、初めて観たときには清太も節子も可哀そうすぎて気づきませんでしたが
彼らの周りには、たくさんたくさん手を差し伸べてくれた人はいたんです。
・学校で親切にしてくれた近所の女性
・遠い親戚にも関わらず清太と節子を受け入れてくれたおばさん
・家出した清太に、謝ってもう一度おばさんの家で暮らしなさいと諭してくれたおじさん
・畑泥棒で清太の罪をとがめずに、やさしく解放してくれた警察官
一方、自分勝手に好き勝手したのは清太だな、と。
・清太は働きにも出ないし、家の手伝いもしない
・家ではゴロゴロしてるか、節子と遊んでいるだけ
・散々お世話になっているのに「お礼の言葉」ひとつもない
・清太は亡き母の財産(結構な大金)を、分け合うことなく自分たちだけに使う
・勝手に調理道具を買ってきて、自分たちだけ食事をする。
でも後片付けをしてくれたのはおばさん
じっくり見て…私が母の立場になったのかもしれませんが
そりゃ、勝手やわ、と感じました。
そして清太も節子も亡くなります。
でも餓死です。
もちろんこの戦争の時代でしたので、餓死の人も多かったと思いますが
隣組にも属していない、好き勝手やってきた彼らには配給もなかったでしょう。
もし、あの時好き勝手にせずに、おばさんの家で集団の中で
こうあるべき、をしていたら…と考えられました。
これは戦争だけではありませんが、世の中がすごく変わり、
私が小さい時とはずいぶん違う世の中になりました。
いわゆる社会的悪が少なくなっていて、多様性が認められ、
それぞれの価値観や考え方も認められ、誰もが生きやすい世の中になったと思います。
(まだ完璧ではありませんが…)
そして、それはとても良いことだと思います。
どんな価値観もそれを否定されることなく、それぞれが幸せに生きる権利を得られ、
それぞれの「個」を大事に出来る世の中になりました。
ただ、個を大事にするあまり、集団での在り方も変わりつつあります。
一昔前は「こうあるべき社会」で集団でのあり方が1つでした。
そこに異を唱えるとかなくて、こうゆうもんなんだ、だったんです。
例えば私は中高ダンス部でしたが、新入生は誰よりも早く練習場に来て、
掃除をして、休憩中も、自分は休憩せずに先輩方にお茶をいれ、次の準備をする。
練習が終わると、後片付けと掃除をして、
そして集合場所には誰よりも早く行かなければいけない、がありました。
それを「なぜ??」と思うこともなく、自分でも「新入生だから」と納得していました。
新入社員になったときも、先輩よりも早く会社に行き、
上司や先輩のお茶を入れ、机を掃除し、ゴミを片付け、
コピーを取ったり、来ているファックスを配ったり、郵送物を配ったり。
そして当然ですが、サービス残業という言葉もなく、
先輩や上司が帰るまでは帰れない世の中でした。
それを嫌だなとか、理不尽だと感じたこともあったと思います。
ただ、「なぜ??」と思うこともなく、これも「新入社員だから」と納得していました。
多様性を認め、それぞれの価値観を大事にする。
これはすごく良いことです。
そして、一昔前と比べて良い時代になりました。これも事実です。
でも一方で…
個を大事にするあまり、集団に居られない(居ることが辛く感じる)人たちも
増えたと思います。
色んな企業で研修をさせて頂いていて、世代間価値観の違いやダイバーシティ
ハラスメントなど様々な研修をさせて頂いておりますが
その都度、いつもこの問いに戻るんです。
価値観や考え方の違いも分かる
時代が変わったのも分かる
個が大事にさせることはいいことだ
でも、本当にいいことばっかり??
すぐに辞める人たち。
感謝の言葉も言わずに退職代行を使う。
メンタルメンタル、とすぐに言われる。
なんでもかんでもハラスメント。
好きなことを、好きな場所で、自分の得意な方法でやりたい。
挑戦して成長したいけど、挫折はしたくない。
これらを「今の時代はそうなんだね」と許容することではなく…
個を大事にするということは、個だけを大事にしてたらダメで
個を活かしつつ集団で貢献することなんだと思います。
会社や社会は集団です。
集団で貢献してはじめて、個が生きるのだと思います。
そんなことを考えさせられた8月15日でした。