コラム

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女性活躍推進と管理職

「次の大型案件、誰に任せようか」

管理職の頭に最初に浮かんだのは、残業や出張にも対応しやすい男性社員でした。すぐ隣には、顧客理解も調整力も十分な女性社員がいます。しかし、「お子さんが小さいから大変だろう」「本人も望んでいないかもしれない」と、確認しないまま候補から外します。

本人を思っての配慮だったはずです。ところが、この判断が何度も重なると、重要顧客、プロジェクト責任者、経営層への報告といった経験が一部の人に偏ります。そして昇進の時期になってから、「女性は管理職に必要な経験が足りない」「候補者がいない」という話になるのです。

女性活躍推進は、女性だけに意欲を求める取り組みではありません。管理職が日々、誰に仕事を任せ、誰の背中を押し、どんな支援を組み合わせるかというマネジメントの問題です。本記事では、女性管理職が増えない背景を「機会の偏り」から捉え直し、現場で実践できる5つの方法を解説します。

女性管理職比率の公表は、ゴールではなく出発点

厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査では、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は13.8%でした。前年度の13.1%から上昇したものの、意思決定層の構成には、なお大きな偏りがあります。

さらに、2026年4月施行の改正女性活躍推進法により、常時雇用する労働者が101人以上の企業には、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務づけられました。制度の詳細は、厚生労働省の女性活躍推進法特集ページで確認できます。

数字が見えるようになれば、経営課題として議論しやすくなります。ただし、比率だけを追い、準備や支援がないまま一人を昇進させても、本人へ過度な負担が集中します。必要なのは、昇進直前の帳尻合わせではなく、数年前から挑戦経験を積める仕組みです。

政府の女性活躍・男女共同参画の重点方針2026でも、固定的な思い込みが女性の活躍を狭める要因となり、企業の行動を変える必要性が示されています。問われているのは、数字を出せるかだけではなく、その数字を生む日常を変えられるかです。

「女性向け施策」だけでは進まない4つの落とし穴

1.女性だけを研修し、上司の行動は変えない

女性社員にキャリア研修を行っても、上司が重要な仕事をいつも同じ人へ任せていれば、学んだことを試す場所がありません。「もっと自信を持って」と言われても、経験の裏づけがなければ手は挙げにくいものです。

2.「配慮」の名で、挑戦機会を先回りして外す

育児や介護、健康上の事情は一人ひとり違います。それなのに、女性だから、子どもがいるからと上司が決めてしまえば、善意が機会の剥奪に変わります。配慮とは、挑戦を外すことではありません。本人の希望と条件を聞き、挑戦できる形へ仕事を組み替えることです。

3.長時間働けることを、意欲や能力と混同する

「夜の会食へ参加できる」「急な出張へ行ける」といった可用性が、重要案件の条件になっていないでしょうか。仕事の難しさと、長時間・突発対応を切り分けなければ、時間制約のある社員は能力を示す前に候補から落ちます。

4.管理職候補が手を挙げるまで待つ

自信が十分でなくても推されれば挑戦する人がいる一方、「完璧にできる」と思えるまで名乗り出ない人もいます。自己推薦だけに頼ると、声の大きさが機会の差になります。上司には、実績を見て候補者へ声をかける役割があります。

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人間関係の改善には、管理職の関わり方と相談しやすい職場づくりが欠かせません。現場に合わせた組織づくりをご相談いただけます。

公平とは「同じ仕事を配ること」ではない

女性活躍推進というと、男女を同じように扱うことだと考えられがちです。しかし、同じ条件を置くだけでは、すでにある経験差や制約は埋まりません。大切なのは、選考基準を透明にした上で、挑戦機会へ到達できる支援を個別に設計することです。

一見やさしい配慮・公平 成長機会を残すマネジメント
出張や重要顧客を、確認せず候補から外す本人の希望と可能な条件を聞き、日程や分担を調整する
「無理しなくていい」と難しい仕事を外す一段上の仕事を示し、伴走者や相談機会をつける
立候補した人だけを候補者にする実績と基準から上司が候補を広く推薦する
全員へ同じ支援を配る必要に応じて代理、柔軟な時間、育成機会を組み合わせる
一人の女性を急いで昇進させる複数の候補者が経験を積むパイプラインをつくる

これは女性を特別扱いすることではありません。家庭事情のある男性、介護中の社員、障害のある社員、地方拠点の社員にも通じる考え方です。女性活躍推進を入り口に、誰もが能力を発揮できる仕事の設計へ変えていく。そのとき、ダイバーシティは標語ではなく経営の力になります。

管理職が「機会の偏り」を変える5つの実践

1.挑戦機会の配分を見える化する

半年から1年分の重要顧客、プロジェクトリーダー、経営会議での発表、他部署との兼務、研修推薦を一覧にします。男女別の人数だけでなく、「初めて任された人が何人いるか」「同じ人へ集中していないか」も確認してください。

人事評価の結果だけを見ても、そこへ至る経験の差は分かりません。結果の手前にある仕事の配分を見ることで、「候補がいない」のではなく、「候補が育つ仕事を渡していなかった」と気づけます。

2.希望と制約を、本人に確かめる

「管理職になりたいですか」という二択だけでは本音は出ません。「今後増やしたい経験は何か」「避けたいのは仕事の難しさか、時間の不確実さか」「どんな支援があれば挑戦できるか」と具体的に聞きます。

本人が今は昇進を望まない選択も尊重します。ただし、一度の回答を永久の意思と決めつけてはいけません。経験や生活状況で考えは変わるため、定期的に対話します。

3.一段上の仕事と支援をセットで渡す

挑戦は、丸投げでは育ちません。重要案件を任せるなら、副担当、相談できるスポンサー、途中レビュー、必要な研修を組み合わせます。最初から完璧な人を探すのではなく、少し背伸びすれば届く機会をつくるのです。

仕事は、最初から楽しいことばかりではありません。壁を越え、自分なりの工夫で仕事を「おもろくする」経験が、自信と知恵になります。その経験を性別や働ける時間で狭めないことが、管理職の親心です。

4.評価と推薦の理由を言葉にする

「リーダーシップが足りない」「もっと存在感を」といった曖昧な評価では、次の行動が分かりません。「会議で異論を整理し、合意まで進めた」「顧客の要望をチームの行動へ落とした」のように、観察できる行動で伝えます。

候補に推薦した理由、今回は選ばなかった理由、次に積む経験を具体化すれば、上司の好みで決まっているという不信も減ります。

5.3か月ごとに、候補者と配分を点検する

女性管理職比率は年に一度見るだけでは遅すぎます。候補者は増えたか、挑戦機会は偏っていないか、支援が機能したかを3か月ごとに確認します。トップと人事は、管理職へ「女性を何人昇進させたか」だけでなく、「誰にどんな経験を渡し、どう育てたか」を問うことが大切です。

配分を見える化する → 本人に聞く → 挑戦と支援をセットで渡す → 行動で評価する → 定期点検する

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知識を得るだけでは、いつもの人を選ぶ癖は変わらない

アンコンシャス・バイアスの意味は、動画でも学べます。しかし、納期が迫り、成果責任を負う場面では、管理職はつい「失敗しない、いつもの人」を選びます。長年の癖は、正解を聞くだけでは変わりにくいのです。

だからこそ研修では、限られた人員と時間の中で実際に仕事を配り、その選択が半年後、1年後の候補者層をどう変えるかを体験する必要があります。短期成果だけを守る選択が、長期的には組織を弱くする。この葛藤を自分事にして初めて、現場の行動が変わります。

カスタマイズゲーム「次の一席をつくれ——機会配分シミュレーション」

受講者は、部門長役、プロジェクト責任者役、人事・ダイバーシティ推進役、観察者役に分かれます。盤面には、経験、強み、本人の希望、働き方の条件が異なる8人の社員カードが並びます。

4四半期を1年として、重要顧客、部門横断プロジェクト、経営会議での発表、予算責任、トラブル対応、後輩育成という6種類の「挑戦カード」を誰へ渡すか決めます。同時に使えるのは、副担当、柔軟な時間設定、スポンサー、事前研修など、数に限りがある「支援トークン」です。

各ラウンドでは、納期短縮や欠員といった事業上の事件が起こります。短期成果を優先すれば、実績のある同じ社員へ仕事を集中させたくなります。一方、将来の候補者を育てるには、未経験者へ挑戦を渡し、失敗のリスクも引き受けなければなりません。さらに選択後、「育児中だから無理だろう」「自信がなさそうだから候補外」といった思い込みカードが開かれ、自分たちの判断根拠を問われます。

指標は「事業成果」「経験の広がり」「チームの持続性」の三つです。同じ人ばかりを選ぶと、短期の成果は上がっても、過重負担と後継者不足が起きます。女性社員を数合わせで責任者にし、支援をつけなければ、孤立と失敗が残ります。失敗したチームには「候補者の離脱」「キーパーソンの疲弊」「次期管理職不在」という結果カードが出ます。

振り返りでは、誰を無意識に候補から外したか、仕事の難しさと長時間労働を混同していなかったか、どの支援があれば別の選択ができたかを話し合い、同じ年度をやり直します。

このゲームで得るのは、全員へ同じカードを配ることが公平なのではないという気づきです。透明な基準で挑戦機会を広げ、一人ひとりに必要な支援を組み合わせる。管理職の今日の配分が、数年後の「次の一席」をつくります。

8人の社員カードに挑戦課題と支援トークンを配り、事業成果・経験の広がり・チームの持続性を競う女性活躍推進の機会配分ゲーム
機会配分シミュレーション「次の一席をつくれ」のイメージ

まとめ:女性活躍は、候補者が育つ仕事の渡し方から始まる

女性管理職を増やすために、女性だけを変えようとしてはいけません。まず変えるべきは、管理職が誰を候補に思い浮かべ、誰へ挑戦を渡し、失敗をどう支えるかという日常です。

社員の可能性を信じるとは、「できるようになってから任せる」ことではありません。一段上の仕事へ送り出し、壁にぶつかったときに一緒に知恵へ変えることです。厳しさから遠ざけるのでも、準備なく放り出すのでもない。その間にある、親心のあるマネジメントが人を育てます。

まずは直近半年の重要案件を並べ、「誰に機会が集中しているか」を見てください。そして次の一件では、いつもの人以外の顔を思い浮かべ、本人へ聞く。女性活躍推進は、そこから動き始めます。

キャリアチアーズ実践型研修が選ばれる3つの理由

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貴社のリアルな課題を投影したビジネスゲームを通じ、本気で笑い、本気で悔しがる中から「逃げ場のない気づき」を引き出します。

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研修での熱い気づきを冷まさないよう、現場での実践を「宿題」として課します。提出された内容には、プロ講師が一人ひとりに「親心」を持った丁寧な赤字添削を行い、確実な行動定着をサポートします。

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サービス一覧
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