コラム

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組織開発・職場改善

組織風土改革とは?必要性や進め方、企業の成功事例をわかりやすく紹介

企業が持続的に成長するためには、制度や仕組みだけでなく「組織風土」の見直しが欠かせません。人材不足や働き方の多様化が進むなか、従業員が安心して力を発揮できる環境をつくることが経営課題として注目されています。

この記事では、組織風土改革の基本的な考え方や必要性、改革によって得られる効果や企業の成功事例をわかりやすく解説します。

組織風土改革とは?定義と組織文化との違い

組織風土改革とは、企業に根付いた雰囲気や働き方の習慣を見直し、従業員が働きやすく成果を出しやすい環境へと変えていく取り組みです。経営理念や戦略を現場に根付かせ、組織全体の一体感と持続的な成長を実現することを目的としています。

「組織風土」と「組織文化」の違い

組織風土改革を理解するには、まず「組織風土」と「組織文化」の違いを把握することが重要です。組織風土とは、日々の職場環境の特性や雰囲気を指し、従業員の行動やパフォーマンスに直接影響します。

一方で、組織文化は企業内で共有される価値観や信念を表し、意思決定や行動の指針として作用します。言い換えると、組織文化が「価値観の体系」であるのに対し、組織風土は「性格や気質」に近く、経営層の意図とは無関係に自然に形成されやすい特徴を持っています。

良い組織風土がもたらす状態

良い組織風土が根付いた環境では、従業員が安心して意見を述べられる心理的安全性が確保されています。これにより社員は主体的に仕事へ取り組みやすくなり、エンゲージメントが高まります。エンゲージメントの向上は業務への集中度や生産性の改善につながり、組織全体の成果に直結します。

また、失敗を恐れず挑戦を歓迎する風土はイノベーションを生み、新しい発想を取り入れる力を高めます。信頼関係が強まった職場では協力体制が整い、社員一人ひとりが安心して能力を最大限に発揮できる環境が実現します。

なぜ組織風土改革が必要なのか

続いて、なぜ今改革が求められているのかを見ていきましょう。社会背景と具体的な効果を知ることで、改革の必要性が明確になります。

組織風土改革が注目される社会背景

近年、市場環境の変化は加速し、人材不足や多様な働き方への対応が企業の大きな課題となっています。人的資本の最大化が成長に直結する中、組織風土改革を通じて柔軟で競争力のある組織を築く必要性が高まっています。

また、テレワークの普及や世代ごとの価値観の違いが広がり、従来の仕組みだけでは対応が難しくなっています。こうした背景から、今あらためて組織風土改革に注目が集まっています。

企業風土改革によって得られる効果

組織風土改革は従業員の意識改善にとどまらず、企業全体の成果に直結します。特に以下の3つの観点で効果が期待できます。

効果の種類 期待される成果
エンゲージメント向上・生産性アップ 従業員が主体的に働き、働きがいが高まることで生産性が改善する
顧客満足度・ブランド向上 社員満足度の高まりが顧客体験に波及し、ブランド価値や信頼度が強化される
競争力強化 柔軟で前向きな風土が新規事業やイノベーションを促進し、市場での競争力につながる

改革は社内の雰囲気改善だけでなく、顧客や市場に影響を及ぼし、持続的な成長を支えます。

組織風土改革の具体的な進め方

必要性を理解したら、実際にどのように取り組むのかが課題になります。ここでは、現状分析から実行、改善までの4つのステップを順を追って解説します。

  1. 現状を分析し課題を抽出する
  2. ビジョンを明確化し全社で共有する
  3. アクションプランを設計し実行する
  4. 評価を行い改善を重ねる

現状を分析し課題を抽出する

組織風土改革の第一歩は、現状を正しく把握することです。従業員アンケートやインタビュー、外部診断を活用し、職場の強みと弱みを多角的に捉えます。たとえば、エンゲージメント調査によってコミュニケーション不足や部門間の連携不足といった具体的な課題が浮き彫りになることがあります。分析の結果を経営層と全社で共有し、優先度を明確にして取り組むテーマを絞り込むことが、改革を着実に進める基盤になります。

ビジョンを明確化し全社で共有する

次のステップは、改革の目的や目指す姿を示すビジョンを策定し、全社で共有することです。ビジョンは抽象的でなく、従業員が共感しやすい具体的な表現に落とし込むことが重要です。経営層が率先して日常的に発信し続けることで、組織全体に方向性が浸透します。

この共有を通じて社員は改革の意義を理解し、自らの行動に結び付けやすくなります。さらに、ビジョンに沿った行動方針やスローガンを明示することで、日常業務における判断や行動の指針が明確になります。

アクションプランを設計し実行する

課題とビジョンが定まったら、具体的なアクションプランを設計し実行に移します。部門を横断するワークショップや対話の場を設け、現場の声を反映しながら目標と施策を設定することが効果的です。

短期・中長期の計画を分け、担当者や期限、KPIを明確にすることで実行力が高まります。また、予算やリソースの確保、役割分担を明確にすることも不可欠です。進行中はPDCAサイクルを用い、進捗を定期的に点検し、小さな成果を積み上げながら改革を維持します。

評価を行い改善を重ねる

改革を持続させるためには、定期的に評価を行い改善を繰り返す仕組みが必要です。従業員満足度調査やエンゲージメント調査を継続的に実施し、数値と現場の声を両面から確認します。評価の結果は透明性をもって全社に共有し、必要に応じて施策を修正します。

このサイクルを継続することで、改革の進捗を社員が実感しやすくなり、協力的な風土が醸成されます。効果的な改善を繰り返すことで、組織全体が学習しながら持続的に進化できる体質へと変化していきます。

組織風土改革の成功事例

進め方の流れが分かったところで、他社がどのように実践して成果を上げたのかを見てみましょう。具体的な事例は、自社で取り組む際の参考になります。

成功事例1:キリンホールディングスの改革事例

市場成熟や事業多角化の進展を背景に、キリンホールディングスは人材を価値創造の源泉と位置づけ、働き方と風土の両面を見直しています。柔軟な働き方と新たなコミュニケーションを整備し、多様性を受容する文化形成を推進しました。

人財投資や育成の指標も開示されており、対話と学習の場も強化されています。その結果、従業員エンゲージメントスコアは2024年に71へ改善しました。今後も継続的な向上を目指していることがわかります。(出典:キリンホールディングス株式会社 プレスリリースESGデータ

成功事例2:ポーラの改革事例

ポーラは全社の組織風土改革を「尖れ、つながれ」のスローガンで推進し、社員のWILLを起点とした挑戦を後押ししています。全社イベント「尖れ、つながれカンファレンス」や自組織を超えたワーキンググループの活動を整備し、実践の共有と称賛を仕組み化しました。

評価制度では中長期変革目標を配分25%として設定し、変革アクションの実装と社員の主体性を高めました。2024年には最優秀賞の受賞が公式発表されています。(出典:POLA 組織風土ニュース

成功事例3:みずほフィナンシャルグループの改革事例

みずほFGは、企業理念の再定義とともに2024年度から新たな人事制度「かなで」を開始し、戦略人事と社員ナラティブを軸に風土変革を加速しています。社員が理念を自分ごと化し自律的に行動する状態をめざし、CEOとCCuOが先頭に立って年間100拠点以上の訪問と本社でのタウンホールを継続しました。

制度は社員と協働で設計され、エンゲージメントとインクルージョンスコアは目標65%を一年前倒しでおおよそ達成しています。(出典:みずほフィナンシャルグループ 企業風土変革CEOメッセージ

組織風土改革を成功させるポイント

成功事例を踏まえて、改革を定着させるための共通のポイントを整理します。経営層の姿勢や社員参加の仕組みなど、実践に役立つ視点を確認しましょう。

経営層がリーダーシップを発揮しスローガンを示す

組織風土改革は経営層のリーダーシップによって方向性が定まり、全社的な推進力が生まれます。トップ自らが改革の必要性を語り続けることで、従業員は変革の意義を理解しやすくなります。

さらに、スローガンを掲げて一貫したメッセージを発信することで、組織全体が共通の目標を持ち、一体感のある取り組みが可能になります。経営層が率先して実践する姿勢を示すことは、現場の納得感を高め、改革を「自分ごと」として捉える意識を醸成する効果もあります。

従業員参加を促進する仕組みをつくる

改革は経営陣だけでなく従業員全員が主体的に関わることで成果が高まります。ワークショップやアイデア提案制度を整備し、現場の声を施策に反映させることが効果的です。従業員が自分の意見や改善案を発信できる環境は納得感を生み、改革の定着につながります。

このような仕組みが、抵抗感を減らし協力的な風土を醸成します。さらに、参加を通じて社員が相互に刺激を与え合うことで、組織全体の学習効果が高まり、改革のスピードと持続性が向上します。

小さな成功体験を積み重ねて継続する

大規模な変革を一度に実現するのは難しく、段階的に取り組むことが重要です。小さな目標を設定し、その達成を積み重ねることで組織は着実に前進します。成功体験の共有は従業員の自信とモチベーションを高め、さらなる改善への意欲を引き出します。

継続的に改善を繰り返すことで、変革は組織文化として定着しやすくなります。また、段階的な達成はリスクを分散し、失敗があっても学びに変えやすい点で有効です。持続的な変革の推進力を維持するために欠かせないアプローチです。

まとめ

組織風土改革は一過性の施策ではなく、長期的な視点で推進すべき取り組みです。経営層の明確なリーダーシップ、従業員が参加できる仕組み、小さな成功の積み重ねを組み合わせることで、組織は柔軟性と競争力を備えた健全な風土を育むことができます。

結果として従業員満足度の向上や生産性の改善が実現し、持続的な企業成長につながります。このプロセスを繰り返すことで変化に強い企業体質が作られ、環境変化に応じて進化できる「自律型組織」へと成長していきます。

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